刑事事件

criminal case

トップページ > 取り扱い業務 > 刑事事件(加害者・被害者) > 私選弁護人の選び方

私選弁護人の選び方

「国選弁護人と私選弁護人の違いについて」というテーマの中で,資力があり,信頼できる弁護士が見つかるならば,私選弁護人を選任すべき場合があるという話をしました。
では,信頼できる私選弁護人はどのように探したらよいのでしょうか?
これは,非常に難しい問題だと思います。

私選弁護人の選び方私に合う弁護人があなたに合う弁護人とは限りませんし,事案によっても,たとえば,交渉能力を重視するのか,争うことを前提に訴訟遂行能力を重視するのかで違いますし,被害者の方と示談交渉をしてもらうのであれば,年齢や性別など,相手方が話をしやすそうな弁護士を選択するという方法もあるでしょう。

合う合わない以前に,委任契約書を作らないとか,契約内容が曖昧で蓋を開ければ追加請求ばかりだったりとか,能力以前の問題として,敬遠した方が良い弁護士もいます。
結局最後は,実際に弁護士のところに足を運んで相談して決めていただく以外にはないように思います。
ここでは,私が考える,1.信頼できる刑事弁護人とは何か?2.私選弁護人を選ぶための質問事項,について書きたいと思います。

  1. 信頼できる刑事弁護人とは?
  2. 私選弁護人を選ぶための質問事項

信頼できる刑事弁護人とは?

刑事弁護人に限らないことかもしれませんが,私が自分の弁護人を選ぶとすれば,(1)熱意,(2)相性,(3)能力の3点を重視したいと思います。

(1) 熱意

やる気がないのなら,話になりません。
刑事弁護人は,検察官との交渉次第で勾留がなされずに済むタイミング,被害者と示談ができるタイミング,保釈が許可されるタイミング等々,それぞれの時機を逃さずに,瞬発力を持って動く必要があります。
時には,おかしな自白を取られないように,毎日接見にでかけて励ましたり,持久力も必要です。
ただ,時々,接見にたくさん来てくれる弁護人が良い弁護人だと勘違いされている方がいますが,それは違うと思います。
もちろん,会いに来ないのも話になりませんが,必要もないのに,それこそ日当稼ぎのために毎日来る弁護士もいないとは限りません。
なお,接見禁止中で,弁護人に必要な業務連絡等を頻回に行って貰う必要がある場合には,依頼をする前にそのような対応も可能かどうか,きちんと弁護士に相談しておくべきです。

(2) 相性

相性も考えたいところです。
人間ですから,どうしても合わない人はいます。
私だったら,日本一優秀な弁護士でも,高飛車な物言いをされる弁護士だったら,やはり敬遠してしまうかもしれません。
厳しく言ってくれる弁護士の方が良いケースもあります。
性格が合わなければ,弁護される側も弁護する側も苦痛です。
そういう意味もあり,私の場合,家族から依頼を受ける場合でも,本人と接見してみて,本人からも依頼があることを条件に受任することにしています。

(3) 能力

刑事弁護人の能力と言っても,認めているか争っているかなど,事件によって必要とされる能力の種類や度合いが異なると思います。
以下,自分も含めて,あったらよいなと思う能力を仕分けしてみました。

a. 見通しを立てる能力

10日勾留なのか延長があるのか,起訴なのか不起訴なのか,懲役求刑なのか罰金求刑なのか,執行猶予なのか実刑なのか,そうした見通しを立てられる能力が重要です。
もちろん,最終的な結果は,ボクシングの試合と一緒で,テンカウントを聞くまでわかりませんが,現状でこの先どういうリスクがあり得るのか,きちんと依頼人に説明ができなければなりません。
そのためには,知識だけでなく,ある程度の経験が必要となります。
相談の際に見通しを聞いてみて,きちんとした説明がなされるかどうかは,弁護人を選ぶ際の重要な判断要素になると思います。

b. 示談交渉能力

中には示談交渉がたいへん上手な弁護士もいます。
そうした能力は,数値で評価できるものではなく,人柄だったり,相手を見る洞察力だったり,説得する能力だったりするわけですが,これについては,他の弁護士からの評価以外には,判断資料が無いかもしれません。
上手下手のほかにも,相手方との相性もあって,理由はわかりませんが,どういうわけか交渉役の弁護士を私が交替したら簡単にまとまった,という経験もあります。私が良かったというよりもむしろ,前の弁護士との相性が悪かったということかもしれません。
示談の成否が重要な事件の場合,この弁護士だったら被害者が話し合いに応じてくれそうかなど,被害者の方の性格を想像してみてもよいかもしれません。

c. 手続遂行能力

刑事事件は,厳格な手続の中での戦いです。
どの時機にどういう手続があるのか,その手続を見越してどの時機に何をしておかなければいけないのか,その手続を選択した場合にどのようなメリットがありどのようなデメリットがあるのかなど,計算立てて遂行する能力が必要です。
たとえば,どのタイミングで保釈請求をするのか,保釈請求が却下された場合に準抗告(不服)の申立をするのか,準抗告申立をした場合としない場合とでどのような違いが生じるかなど。
最近では,裁判員裁判の対象事件ではない事件(たとえば,争いのある詐欺事件など)でも公判前整理手続といって,裁判を始める前に,採用される証拠や証人の内容を予め決めてしまう比較的新しい手続が採られることが少なくありませんが,もはや駆け引きの主戦場と言っても良いほど重要な手続であるにもかかわらず,同手続について,きちんとした知識と経験を持ち合わせている弁護士は,若手,ベテランにかかわらず,そう多くはないと思います。
争いのある事件の場合には,相談の際に,公判前整理手続の経験の有無なども聞いておいた方がよいでしょう。

d. 証拠収集能力

著名なえん罪事件の多くは,弁護人が収集してきた新証拠によって覆されたものです。弁護人が見つけたたった1つの証拠で,検察官のストーリーが脆くも崩れ去ることがあります。
事実関係を争っている事件では,証拠を見つけ,集め,証拠化する能力がきわめて重要です。逆に,事実関係を争っていない事件ではあまり必要ありません。

e. 尋問能力

これも,基本的には,事実関係を争っている事件において必要な能力だと思います。
裁判所に傍聴に行くとわかりますが,尋問が上手な弁護士とそうでない弁護士との違いは,結構歴然としています。
たとえば,以下のような反対尋問は,ダメだとされています。
 弁護士:証人,あなたは本当に現場で被告人を見たんですか。
 証人:ええ,見ました。
 弁護士:本当ですか。
 証人:本当です。
 弁護士:嘘をついていませんか。
 証人:嘘などついていません。
→確たる反対証拠を握っているなら格別,「見たのだ」という検察側証人の証言をわざわざ上塗りしているにすぎない。
経験で身に付いていく部分も多いところですから,取り扱われてきた事件などを聞いてみて,判断するほかないかもしれません。

f. 書面作成能力

刑事裁判は,厳格な手続の中で行われていますので,保釈請求書,弁論要旨をはじめ,時機に応じて提出すべき書面が多くあり,裁判所を説得できる書面を作成できる能力も必要です。
もちろん,書面を書くのが上手ければよいということではなく,まずは,書面を提出する熱意が必要ですし,いくら文書がうまくても,主張に沿った証拠を伴っていなければ意味がありません。

g. プレゼンテーション能力

とりわけ裁判員裁判の場合には,裁判官を説得できるだけでは足りず,一般市民で構成される裁判員にも弁護側の主張を理解させなければなりません。
裁判員を味方につける上で,一般市民にもわかりやすい質問の仕方や,主張の仕方が必要な時があります。
いくら主張が立派でも,弁護人のプレゼンテーションが悪くて裁判員に嫌われ,かえって量刑が重くなったなどということがあれば目も当てられません。

私選弁護人を選ぶための質問事項

広告だけで医者を選ぶことができないように,最終的には,実際に相談してみて,依頼するかどうかを判断するほかありません。
そこで,ご相談される際の1つのアイデアですが,たとえば,弁護士に相談する際の質問事項として,以下の質問のうち,いくつかを交えてみたらどうでしょうか?

刑事弁護事件はこれまで何件くらい経験されていますか。○○罪の事件を扱ったことはありますか。

取扱い件数が多ければ,示談交渉等,いわゆる場数を踏んでいると言えます。
もちろん,ここでいう取扱い事件数は,「事務所で何件」というのではなく担当する弁護士の取扱い事件数です。

否認事件は何件くらい取り扱ったことがありますか。

否認事件の取扱件数が多ければ,裁判所や検察官と駆け引きする必要から,刑事手続についても詳しいことが多いです。自白事件しか取り扱ったことがない弁護士は,刑事手続を熟知していないことが多いです。

裁判員裁判の弁護をされたことがありますか。

公判前整理手続など,最近の刑事手続を理解しているかどうか。ただし,あまり理解せずに裁判員裁判の弁護をされている弁護人もいます。

最近,刑事弁護事件を取り扱ったのはいつですか。

罪名によっては量刑相場が変化していることがあり,見通しの能力に影響します。たとえば,最近,同種事件を取り扱った経験があれば,それだけ正確なことが多いと言えます。

弁護士会の刑事弁護委員会には所属されていますか。委員会活動はされていますか。

刑事弁護委員会で,きちんと委員会活動をしている方は,刑事裁判所との協議会に出席するなど,比較的熱心に勉強されている弁護士が多いです。ただし,委員会に所属していることと,委員会活動をしていることとは別です。

必要なら接見にはどのくらいのペースで行けそうですか。

用もなく頻回に接見に行けばいいというものではありません。ただ,必要なときに忙しすぎてなかなか行けない弁護士もいます。特に,頻回に行ってもらいたいケースでは,率直に聞いてしまった方がよいと思います。

本人はどのくらいで外に出られそうですか。保釈は可能ですか。裁判の見通しはどうですか。

きちんと見通しを立ててもらえそうか,説明に曖昧さやいい加減さはないか,いろいろ聞いてみてください。

弁護士費用について教えてください。接見日当は?保釈請求は別ですか?実費の負担はどうなりますか?

費用の問題は,きちんと聞いた方がよいです。

お問い合わせ・法律相談のご予約

当事務所へいらっしゃる方は「弁護士に相談をするのは初めて」という方が少なくありません。
ご不明な点がありましたら遠慮なくお問い合せください。

Pagetop