夫婦の問題,離婚
a couple's problem
財産分与の対象となる財産
「私が経営する会社名義のものも分けなければなりませんか?(1)最近親から相続した土地,(2)3年後にもらう退職金,(3)非公開株式(自社株),(4)年金などはどうでしょうか?」
財産分与の対象となる財産
清算的要素の問題として,婚姻関係中に夫婦が築いた財産が分与の対象になるわけですから,相続で一方が取得した財産,婚姻前からの預貯金などは原則として対象となりません。
珍しいところでは,たまたま当たった万馬券で購入した自宅なんていうのも,夫婦で築いた財産とはいえないので,財産分与の対象として評価しなかった裁判例もあります。
- 相続財産
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説例にある「最近親から相続した土地」は,夫婦が築いたものではないので,財産分与の対象にはならないでしょう。
しかし,相続した財産であれば絶対にならないのかというと,必ずしもそうではありません。たとえば,夫が親から引き継いだ店を夫婦で切り盛りして維持してきた場合などは,「特有財産の減少防止に協力した点において,その財産につき,一種の持分的権利を有する」などと判示した裁判例もあります。扶養的要素を考慮に入れたものと評価することもできると思います。
- 退職金
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「3年後にもらう退職金」,これはどうでしょう。
まだ100パーセントもらえると決まったわけではありません。
懲戒免職処分でも受ければ,ゼロになる可能性だってないわけではありません。
就業年数が2,3年というところでは,退職金がもらえるかどうかもわからず,「評価外」ということもあるでしょう。
ですが,長年勤めあげてきて退職まであと3年ということであれば,かなりの蓋然性を持って3年後には取得される可能性が高いということにもなりましょう。こういうケースであれば,財産分与による清算の必要性があることは,ほぼ異論がないと思われます。
清算するといっても,あくまでも婚姻中の部分についてということになりますので,結婚前の就業期間や離婚成立後の期間については,分与の対象からはずれることになります。
- 自社株
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以外と盲点になるのが,経営会社の自社株でしょうか。
妻から「あなたの会社の株なんて要らない」と言われれば別ですが,毎期ごとに一定額の配当を得ている場合など,非公開株式といえどもやはり資産であり,それが婚姻関係中に築いたものということであれば,財産分与の対象と言うことになります。事業者の方の中には,「不動産などを会社名義にさえしておけば安心」と考えている方がいらっしゃれば,会社名義の不動産は財産分与の対象とならなくても,当該会社の貴方名義の株式は,財産分与の対象になりますので,注意しておく必要があります。
離婚を契機に別れた妻に会社の議決権を握られ,会社経営が立ちゆかなくなるケースもあります。
- 年金
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年金はどうでしょうか。
扶養的財産分与の問題になりますが,サラリーマンの妻の場合,妻の固有の年金権として基礎年金の受給権があります。
このほか,平成16年の年金制度改革により,平成19年4月以降に離婚が成立した場合には,夫の年金のうち厚生年金部分については,夫の同意または裁判所の決定(調停調書,審判調書,判決,和解調書)があれば,夫の年金受給権を妻に分割することができるようになりました。離婚したい妻には夢の制度みたいに書かれていることもありますが,結構誤解も多いです。
まず,分割を受けても,分割されるのは受給できる権利にすぎませんから,妻自身が年金の受給年齢に達するまで年金は支給されません。要するに,離婚した妻は,年金がもらえると思って離婚したはいいけど,年金の受給年齢に達していなければ達するまでは年金の受給がない,働いていなければとりあえず収入がないということです。他方,年金の受給権ですから,夫が死亡してしまってももらえます。
それと,あくまでも厚生年金部分に限られているということも,誤解されていることが多いです。