債権回収
debt collection
元請会社の支払遅延
「建設業をしていますが,私の会社(X社)が孫請けで工事を受注しました。当社は工事を完成させ,当社に直接発注した会社(A社)に代金を請求したところ,支払ってくれません。
A社は発注者である○○市から,すでに工事代金として4200万円(税込)を受領しているのですから,請負代金を支払えないはずがありません。A社から請負代金を回収したいのですが,どうしたら良いでしょうか。」
A社が特定建設業者かどうかの確認
A社が特定建設業者である場合には,X社のような下請会社に対し,建設業法に基づく特別な義務を負うことになります。
A社が特定建設業者であるかどうかの確認については,下記事項を確認することで,容易に判断できると思われます。
【特定建設業者か否かを判断するための確認事項】
- A社との契約書,A社からの注文書
- 工事現場での掲示物(建設業の許可票)
- A社のホームページ,会社案内
- A社担当社員の名刺など
特定建設業者に対する建設業法上の責任追及
(1)下請代金の支払期日が決められている。
A社は,原則として,以下の期日までに,X社に対し,下請代金の支払をしなければならず,正当な理由なく下請代金の支払いを拒むことはできません(建設業法24条の5第1項,第2項,第4項前段)。
【下請代金の支払期日】
A社が検査によって目的物に関する建設工事の完成を確認した後,X社が当該建設工事の目的物の引渡を申し出た日から起算して50日を経過する日
また,A社は,発注者である○○市からすでに工事代金を受領していますので,X社に対し,工事代金を受領した日から1か月以内に,下請代金を支払わなければなりません(建設業法24条の3第1項)。
したがって,X社はA社に対し,下請契約のみならず建設業法の規定に基づき,下請代金の請求をすることができます。
(2)年14.6パーセントの遅延利息を請求できる。
A社が,支払期日を経過しても下請代金を支払わない場合,X社は,下請代金に加え,支払期日の翌日から下請代金完済までの期間に相当する年利14.6パーセントの遅延利息を請求できます(建設業法24条の5第4項後段,建設業法施行規則第14条)。
下請代金が高額にのぼることからすると,年利14.6パーセントの遅延利息を付ければ,利息自体もそれなりの金額になります。
意外と知られていないところですので,必ず年利14.6パーセントの遅延利息も加えて請求しましょう。
早期解決の重要性
下請業者にとっては,元請業者の代金不払が資金繰りの悪化,ひいては会社そのもの倒産に直結することもあり得るので,早期の債権回収が必須といえます。
債権回収にあたっては,建設業法に関する専門的知識のみならず,時には監督官庁への働きかけも必要となります。
早期の債権回収を図るためには,すみやかな対応をとることが重要です。
(弁護士 髙橋裕 最終更新:平成25年11月6日)