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著作紹介「夫婦財産契約の理論と実務」山田俊一著
さいわい総合事務所の山田俊一先生(税理士)が、以下の書籍を執筆されましたのでご紹介させていただきます。
「夫婦財産契約の理論と実務」(ぎょうせい) 定価4800円
我が国で「夫婦財産契約」と言われても、一般の方はほとんど知りませんし、弁護士に聞けば「ほとんど使い道のない制度でしょ。」と言います。
夫婦財産契約というのは、簡単に言いますと、結婚する前に、離婚することになった場合に備えて決めておく、夫婦間の財産の分配など関する約束ごとのことです。
諸外国では多く利用される制度ですが、我が国の民法に従ってこの制度を利用するには、1.登記を必要とされていること、2.結婚後の訂正が認められないこと、といった使い勝手の悪い部分があり、年間全国でも数件しか利用がないままとなっています。
我が国でも、夫婦の形態が変わってきていますし、離婚率も上昇する一方です。
双方がそれなりの資産を形成してから結婚するケースでは、結婚前の財産と共有化する財産を明確化しておく必要があります。
会社を興した方が、後継ぎの息子を指導しながら新しい伴侶と再婚を迎えるケースでは、後継ぎに引き継がれるべき会社資産を共有財産と区別していく必要があります。
日頃離婚事件を多く扱う弁護士としては、あらかじめ特有財産を区別し書面化しておくことで、回避できる紛争は、非常に多いのではないかと感じます。
離婚という事態をあらかじめ想定することを良しとしないところがありますが、相応の資産を形成された晩婚の場合には、様々な利害関係が絡み、憶測による誤解や反対を受けることも多いです。
離婚という事態にはならなくても、このような合意をしておくことで、周囲の誤解や反対を退けて、皆に祝福される結婚へと導いていけるケースも多いのではないかと思います。
山田先生の著書のすばらしい点は、同制度の沿革や制度比較についての精緻な分析はもとより、ケースごとに具体的なモデル契約書を示されて、現行法のもとでも本制度の使い勝手を良くしようと苦心されているところです。
ここは、私(伊東)個人としての見解にすぎませんが、登記まで至らなくても、万が一紛争が起こった場合の確認書面(証拠)として作成し、夫婦財産契約制度のもつ“特有財産の明確化”という機能だけでも、これを利用される価値は十分にあると思います。
古くて新しい分野に光を当てられた貴重な図書ですので、是非ご一読いただきたく、ここにご紹介させていただきます。
弁護士 伊東克宏
2012年8月10日、カテゴリー:事務所からのお知らせ
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