弁護士 伊東克宏のブログ
Katsuhiro Ito's Blog
有斐閣「平成24年度重要判例解説勉強会」-③(経済法)ほか 2013.7.9
1 平成24年度重判解説より「経済法」の分野を、私(弁護士伊東)が担当して解説しました。
たまたま今年7月から、某機関より“入札監視委員”のお役目をいただくことになり、この機会に独占禁止法を勉強しようと思い、担当者を志願いたしました。
新聞などを見ていると、「課徴金○○億円!」などといった報道が賑わい、巨額の行政処分にばかり目がいきがちですが、実は、独禁法そのものは、不公正取引など、結構身近なものを規制していたりします。
そこで、我々がどう使うか?といった視点から、平易な解説を試みました。(もとより高度な解説はできません。)
自分で作ったレジュメなので下の方に貼り付けてしまいます。(重判部分は省略。)
内容の多くは、弘文堂「独占禁止法」(金井貴嗣ら編著)から引用させていただきました。非常に良くできた基本書です。
2 中業企業診断士の染谷勝彦先生より、「事業再生」をテーマに講義をしていただきました。
「経営革新等支援機関」の現状など、多数聴講者がいたら聞けない話なども聞けて、たいへんおもしろかったです。
3 次回は、社労士の先生に、「労働法」分野について解説していただく予定です。
平成25年7月9日勉強会レジュメ
~我々が独禁法に触れる場面って?~
「課徴金○○億円」とか新聞報道を見てもピンと来ませんが,・・・実は,中小企業が独禁法と関わる場面って結構あるのでは?
ex.顧問先会社が,従前から公共工事に関する談合に付き合わされていて愚痴をこぼされた。
ex顧問先会社が,事業者団体から談合を唆されている。
ex.顧問先会社が,談合による入札妨害により,損害を被った。
ex.顧問先会社が,主要な取引先から,根拠のない協力金を押しつけられている。
ex.顧問先会社の取引先が,必要な商品と不必要な商品を抱き合わせで購入するよう求められている。
第1 独禁法の概要
資料「知ってなっとく独占禁止法」(公正取引委員会)
第2 「独禁法エンフォースメント」とは?
1 意義
独禁法の実効性確保(enforcement:執行)
独禁法が規制対象とする違反行為には,競争制限効果の程度や行為の態様の違いに応じて,行政・刑事・民事の各側面から複数の措置とそれぞれの執行手続があり,これらの措置及び執行手続をどのように連携させて運用し,あるいは利用していくかが,執行機関のみならず,独禁法を用いて事業活動上の問題を解決しようとする企業や,競争制限によって被害を受ける需要者・消費者にとっても,極めて重要である。(「独占禁止法」弘文堂,金井ら編著)
2 各措置
(1)行政上の措置
公正取引委員会と審査手続,排除措置命令,課徴金納付命令,課徴金減免制度,審判手続,審決取消訴訟
(2)民事上の措置
①独禁法違反の法律行為の効力の問題,②損害賠償請求(法25条,民法709条),③独禁法違反に対する差止請求(法24条)
(3)刑事上の措置
刑事罰(両罰・三罰規定),専属告発制度,犯則調査手続
3 特に,民事的救済制度(私的エンフォースメント)について
~「公取に通報・相談してみなさい。」のほかに~
(1)独禁法違反の法律行為の効力
ⅰ 契約が独禁法に違反し無効であるとして,契約上の債務不存在の確認を求めたケース
ⅱ 契約違反による損害賠償あるいは違約金の請求に対する抗弁として,当該契約が独禁法に違反するとしてその無効が主張されたケース
ⅲ 契約が独禁法に違反するとしてその無効を主張し,相手方に不当利得の返還を請求したケース
ⅳ 契約解除が独禁法に違反するとしてその無効を主張し,契約上の地位の確認や商品の引き渡しを求めるケース
→独禁法違反の法律行為は原則として公序良俗に反し無効であるとし,当該事案において無効とすることが当事者間の信義・公平,取引の安全等の観点から不適当である場合について有効とするのが適切であろう。(「独占禁止法」弘文堂,金井ら編著)。
(2)損害賠償請求(法25条,民法709条)
第25条 第三条、第六条又は第十九条の規定に違反する行為をした事業者(第六条の規定に違反する行為をした事業者にあつては、当該国際的協定又は国際的契約において、不当な取引制限をし、又は不公正な取引方法を自ら用いた事業者に限る。)及び第八条の規定に違反する行為をした事業者団体は、被害者に対し、損害賠償の責めに任ずる。
2 事業者及び事業者団体は、故意又は過失がなかつたことを証明して、前項に規定する責任を免れることができない。
〈不法行為に基づく損害賠償請求との対比〉
ⅰ 無過失損害賠償請求であること(25条2項)
ⅱ 公取委への求意見制度があること(84条)
ⅲ 東京高裁の専属管轄とされていること(85条2号)
ⅳ 公取委の確定した排除措置命令(排除措置命令が行われなかった場合には課徴金納付命令)又は66条4項の審決(違法宣言審決)が訴訟要件とされていること
ⅴ それらの確定日から3年が経過したときに請求権は時効により消滅すること(同条2項)・・・など。
(3)独禁法違反に対する差止請求(法24条)
第24条 第八条第五号又は第十九条の規定に違反する行為によつてその利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、これにより著しい損害を生じ、又は生ずるおそれがあるときは、その利益を侵害する事業者若しくは事業者団体又は侵害するおそれがある事業者若しくは事業者団体に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
第3 平成24年度重要判例を読む
〈独禁法の判例を見るときに必要な視点〉
① 行政上の措置か,民事上の措置か,刑事上の措置か?
② どのレベルにおける判断か?
公取の通知・警告
公取の排除措置命令,課徴金納付命令
公取の審決
取消請求に対する東京高裁の判決
上記に対する最高裁の判決
③ どの規制内容に対する判断か?
不当な取引制限か,不公正な取引方法か,企業結合の禁止か・・・など。
(以下省略)
2013年7月10日、カテゴリー:民商法研究会
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